「favorite」加藤いづみ

　美しく優しい歌声を堪能したい方に是非ともお勧めしたいアルバムがあります。「好きになって、よかった」で有名な加藤いづみによる邦楽カバーアルバムです。カバーブームの中に埋もれてしまっているのが忍びなく感じるほど出来の良い一品です。

　徳永英明をきっかけに“カバー”というジャンルが大衆音楽界に根付きました。以前にも記事で書きましたが、これは一流の楽曲を様々な角度から楽しむことができ、深みのある音楽生活を送れるという点においては歓迎すべきことです。一方でオリジナルを完全に罵倒しているような粗悪品も多く生まれてしまいましたが、それもアーティストの力量の判断材料になり、取捨選択の幅が広がったと思えばよいのかもしれません。その多くのカバーの中から、自分の好みの楽曲を、自分好みの歌声で歌ってくれているアルバムと出会えると嬉しさも倍増といったところでしょうか。

　さて、今回ご紹介するアルバムは、加藤いづみによる「favorite」です。特に彼女の歌声を聴いていただきたいのです。ここまで素直な歌声は珍しいです。技術をひけらかすわけではなく、変にこねくり回すわけでもなく、ありのままなのです。この歌声、そのものが才能のような気がしてなりません。
　そしてカバーアルバムとしての選曲としても完璧に近いものがあります。７０年代から９０年代の中から選び抜かれた楽曲は、彼女の歌声に似合い、それでいて音楽ファンの心をつかむ名曲ばかりです。
　緩やかな時間を与えてくれたアーティストに感謝します。

「favorite」加藤いづみ
01.中央線
02.風をあつめて
03.初恋
04.赤い花白い花
05.地球はメリーゴーランド
06.どんなときも。
07.守ってあげたい
08.この空を飛べたら
09.フレンズ
10.悲しみにさよなら
11.恋はみずいろ
12.今日までそして明日から
13.見上げてごらん夜の星を