「water(s)」Every Little Thing

投稿者: としぼん 投稿日時:2008/05/09
カテゴリー:【J−POP】 【としぼんのおすすめ】 【おすすめ度:☆☆☆☆☆

 人とのつながりの大切さを、”単純”な言葉で綴った楽曲。多種多様なコミュニケーションの道具がそろっているのに何かが足りない世界の中で、もっとも大切なことを気づかせてくれる歌である。

 この楽曲を収録した6thアルバム「commonplace」は前作「Many Pieces」から引き続き、人とのつながりや温かみを重視する内容となっている。その中でも中心的な役割を果たしているのが「water(s)」である。作詞をした持田香織によると「waterとは人のこと。sは複数のs。」ということらしい。文法的には問題があるのだろうが、彼女が伝えたいことはよくわかる。

 人の心は水のように流動的で、冷たくなったり温かくなったり、濁ったり清んだり、はたまた人を映す鏡になったり―科学的には人の体の主要成分であったり?―「水」と「人」は同じなのだ。ただ、人は一人では生きていけない。歌詞にあるように「君と僕とが寄り添い重なり 人とゆう風景が作り出す世界」というように自分以外の誰かがいて初めて、自分が自分であるということだ。「あいしてる」「ありがとう」を言われる人ばかりがしあわせじゃない。言える人もしあわせなのだ。

 一方「water(s)」の世界観を音で支えているのは、作曲した早川大地(東京エスムジカ/Sweet Vacation)である。文字通り、揺らめく淀みのない美しい楽曲を提供してくれている。そして、それに重なり合う持田香織の歌声も秀逸である。彼女の”今”の歌声だからこそ、この楽曲が生かされていると言っても過言ではない。
 「今」の彼女の歌声を否定する人もいる。たしかに彼女の歌い方は明らかに変化してきていて、デビュー当時のような澄んだ歌声ではなくなった。高音の出が悪くなり、舌を巻くような、もっちゃりした歌い方になった時期もあった。しかし、私はそれでもいいと思う。同じ歌を10年も歌い続ければ表現の仕方も変わるし、尋常じゃなく喉を酷使する職業だ。歌声の変化は当然起きうることである。

 音楽は、人とともに生きている。歌い手も聴き手も等しく時間が過ぎる。その中で表現するものも変化する。大切なのは「今を表現すること」だ。その意味において、人とのつながりを謳った「water(s)」は、年輪を重ねてやわらかくなった今の彼女でしか表現できないものだ。10年前のキャピキャピした歌声だと違和感がある。だから、この楽曲に似合う彼女の「今」の歌声は素晴らしいのだ。

*追記*
アコースティックに編曲した楽曲を収録したACOUSTIC : LATTEでは、全くアレンジの違う「water(s)」が聴ける。こちらはより温かみのある音源となっている。

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